Background
2040年に110兆円規模と予測される宇宙市場。大樹町には射場(HOSPO)と、スペースコタン社を中心とした産業集積が着実に育っている。しかし、ハードの整備が進む一方で、「住民の日常」は後回しにされがちだ。
宇宙産業の急拡大
射場整備(LC-1, LC-2)が加速。スペースコタンによる産業集積が進む。
小規模自治体の限界
人口約5,400人、行政人員の不足。一般財源に依存できない構造。
住民生活の置き去り懸念
ハード整備優先の動きの中で、住民の声が事業計画に届いていない。
海外の教訓
Starbase(SpaceX城下町化)やKourou(住民不在・社会不安)のリスクを避けたい。
「対話から実装へ」——住民説明会で終わらせない、日常の中にまちづくりを溶け込ませる仕組みをつくること。それが私のミッションだ。
The Model
「産学官民連携」という言葉は多用されるが、誰が何をするかが曖昧なまま動いている現場が多い。大樹町では4者の役割を明確に分け、行政の負担を最小化しながら自走できる体制を設計した。
大樹町リビングラボ 公民学連携モデル ― 4者が役割を分担し、行政負担を最小化
Projects
「宇宙のまちづくりグランドデザイン」策定
急速に成長する宇宙産業が地域住民の生活にどう関わるか——その基本構想を、住民・行政・産業が納得できる形でまとめる仕事だった。単なるビジョン文書ではなく、「実行できる設計図」を意識した。
住民へのヒアリング、産業側のロードマップ調査、国内外の宇宙港周辺地域の先行事例分析を並行して進め、「宇宙港と共存する人間中心のまちづくり」という方向性を言語化した。
「共創のまちづくり」プロジェクトリード
グランドデザインを「実装」するために、実際に大樹町へ移住した。行政担当者ではなく「地域PM」というポジションで入ることで、住民・行政・産業・大学の4者の間に入り、利害を調整しながら動ける立場を得た。
最初の1年は「聴くこと」に徹した。公式の住民説明会ではなく、日常の場での対話を重ね、「宇宙」という非日常が住民の暮らしにどんな不安と期待を生んでいるかをつかむことから始めた。
大樹町リビングラボ 設立検討・設計
「対話から実装へ」のインフラとして、リビングラボの設立を検討・設計中。年数回のイベント的な住民参加で終わらせず、まちづくりの議論を日常化し、実際に動かせる仕組みをつくることが目標だ。
企業版ふるさと納税や国のソフト事業交付金を活用した自走型運営モデルを設計し、一般財源に依存しない持続可能な体制を目指している。北大 松島研究室を学術的司令塔に、行政は「フィールド提供」に徹する構成。
未来共創会議の設計と運営
従来の住民説明会との最大の違いは、「無作為抽出」という設計だ。世代・職業・宇宙への関心度を問わず選ばれた住民が、町長と直接対話できる場をつくった。
「言いっ放し」で終わらないよう、会議で出た声が実際の事業計画や拠点整備に反映される仕組みを、行政の内部プロセスと接続しながら設計した。
Insights
大樹町プロジェクトで、積み上がった「実装の経験」
行政の「主体」から「伴走者」への転換は、言葉より設計が先 「住民主体」を掲げるだけでは何も変わらない。行政が「伴走者」に徹せるよう、意思決定の場と財源の設計を最初から変える必要がある。
産業集積のリスクは「住民不在」から生まれる Starbase(米国)が示すように、企業主導が進みすぎると地価高騰・行政機能の依存が起きる。住民の声が計画に入り続ける仕組みが、長期的な共生を支える。
財源の自立なしに、思想は持続しない 一般財源に頼らない運営モデルを最初から設計することが、プロジェクトが行政の予算サイクルに飲み込まれない唯一の方法だ。
「非日常(宇宙)」を「日常(暮らし)」に接続するのが地域PMの仕事 宇宙産業の成果を、住民が体感できる日常の利便性・居場所・交流に還元する「翻訳者」の役割が、地域PMには求められている。
大樹町モデルを参考にしたい自治体・研究者、
または「現場の話を聞きたい」という方へ。